戦略的イノベーション創出推進プログラム「革新的医療を実現するためのバイオ機能材料の創製」
Aquala(アクアラ)は、合成バイオマテリアルである 2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine (MPC) を光開始グラフト重合法を用いて人工股関節摺動面に表面処理を行う世界初の技術です。医工、産学連携で製品化に向け開発をすすめ、2011年4月薬事承認を取得しました。
人工股関節は、外傷や疾病などにより機能を喪失した関節を切除し、その代わりに使う医療機器です。骨に固定する部分と、関節運動をする部分とから成ります。
人工関節は、体内に入れてから長期間使用すると、骨に固定する部分に「ゆるみ」を生じることがあります。「ゆるみ」が起きる原因の1つが、関節面が摩耗して生じる小さな粉(摩耗粉)です。私たちは、関節面の摩耗を少なくすることと、摩耗粉が体に悪影響を及ぼさないことを両立することができれば、人工関節の寿命(耐用年数)を長くできると考えました。
MPCに含まれるホスホリルコリン基は、細胞膜を構成するリン脂質と同じ構造を有しているため、高い保水性と生体親和性を持っています。クロスリンクポリエチレン(CLPE)表面に約100 nmのMPCポリマー層を形成することで、関節軟骨と同様の保水性が高く、潤滑性に優れた機能を得ることができます。
MPC処理CLPE表面のぬれ性を接触角で評価すると、疎水性であった表面が親水性へと変化し、ぬれ性が向上していることが確認されました。
手術後の歩行運動を再現する人工股関節シミュレーション試験機を用い、MPC処理CLPEの耐久性(耐摩耗性)を評価したところ、MPC処理CLPEライナーは未処理CLPEと比べ、ほとんど摩耗が生じておらず、高い耐摩耗特性を有していることが確認されました。
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